脳神経内科の領域では、記憶力の評価というのがとても重要です。しっかり記憶についての理解を深めましょう。
記憶による分類には時間による分類とともに内容による分類があります。その分類をしっかり整理しておくことで、すぐに理解できるようになります。
前回は記憶の【時間】による分類を説明しましたので、↓に置いてあります。
- 内容による分類として、まず陳述記憶と非陳述記憶があります
- 陳述記憶の中にはエピソード記憶(出来事記憶)と意味記憶があります
- エピソード記憶の中に逆行性健忘と前向性健忘があります
- 非陳述記憶には手続き記憶があります
陳述記憶と非陳述記憶
内容の分類として、大きく分けて陳述記憶と非陳述記憶があります。
記憶が言葉で説明するものであれば陳述記憶です。
技術、技能や体の動かし方など、言葉では説明のできない記憶は非陳述記憶といいます。
分類はまずここからスタートです。
陳述記憶は言葉で説明できる記憶
非陳述記憶は言葉で説明できない記憶
陳述記憶 – エピソード記憶と意味記憶
陳述記憶にはエピソード記憶と意味記憶があります。
エピソード記憶は個人が経験した記憶
例えば、昨日は誰とどんなことをして遊んだのか、先月にどこへ旅行して何を食べたのか、などです。つまりその経験した出来事や状況について、いつ、どこで、どんなことがあったのか、について説明できることです。
意味記憶は知識
日本の首都はどこか、794年にはどんな歴史的な出来事が日本であったのか、などに当たります。赤信号は止まらなければいけない、一方通行で逆走をしてはいけない、という社会のルールを知っていることも意味記憶になります。
つまり、なくよウグイス平安京として794年に平安京へ遷都したことを知識として知っていても、実際に経験したわけではありません。これは意味記憶です。そういえば中学生の授業で社会の先生からこの語呂を教えてもらったなぁ、というのがエピソード記憶です。
陳述記憶にはエピソード記憶と意味記憶がある。なんとなくわかりましたでしょうか。
非陳述記憶 – 手続き記憶、プライミング、条件反射
次は非陳述記憶です。
非陳述記憶は言語やイメージ化することができない記憶になります。これには、手続き記憶、プライミング、条件反射などが含まれます。
非陳述記憶で最も大事な手続き記憶について説明をします。
手続き記憶は習得した技術の記憶
例えば、自転車に乗る、楽器の演奏をするなどに当たります。
言語化しなくても、野球部の人は上手にボールをバットに当てる技術を習得しています。
料理の得意な人はその情報をいつ、どこで獲得したか忘れても料理を作ることができます。
記憶には陳述記憶と非陳述記憶がある。陳述記憶の中にエピソード記憶と意味記憶がある。非陳述記憶には手続き記憶がある。
ということですね。頭の中でフローチャートが想像できたでしょうか。
最後に健忘(けんぼう)について説明をします。一般的に記憶障害というとエピソード記憶の障害をいいます。そしてエピソード記憶のみの障害について、健忘症候群と呼びます。頻度が高いものとしては一過性全健忘が知られていますが、脳梗塞などの場合もあります。
健忘には前向性健忘(ぜんこうせいけんぼう)と逆行性健忘(ぎゃっこうせいけんぼう)がある
逆行性健忘は発症前のことが思い出せません。昔のことを思い出せるけど最近のことは思い出せない、などのこともあります。
前向性健忘は発症後のことを覚えられません。ただし、即時記憶と言って、他の邪魔が入らない10秒以内程度の記憶は保たれています。そのため、会話などは通常することができます。一方で同じことを何度も聞いたり、同じ話を繰り返したりします。
下記の文献がとてもわかりやすいです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/30/1/30_1_19/_pdf
次は失語症について説明をしています↓