脳神経内科医として働いていても、失行を評価しようと思わないとなかなか評価しないものです。パーキンソン症候群、特に大脳皮質基底核症候群などでも現れやすい失行について説明をします。
観念失行?観念運動失行?よくわからないよ
- 失行は学習された行為ができなくなる。
- 観念運動失行は何かのマネをしてもらう。
- 肢節運動失行はキツネの手。
- 観念失行は教科書にあるが定義が移り変わっている。
失行ってなに?
失行は、学習された意図的な行為、動作ができなくなる障害のことをいいます。指示された内容はよく理解をしているのに、それをいざ行おうとするとできない状態です。
例えば、警察官の敬礼をしてください、と指示します。
敬礼は年代を問わずほとんどの人が知っていますよね。これができなくなるのが失行です。
観念運動失行と肢節運動失行
観念運動失行
先程の敬礼は観念運動失行と呼びます。他にもさようならと手を振ってもらったりします。
他にも歯ブラシで歯を磨くマネをしてください、ドアの鍵を開けるマネをしてください、など、日常生活で行う動作をやってもらったりもします。これができない失行も観念運動失行に入ります。
このような観念運動失行はパントマイム失行ともよびます。
肢節運動失行
今度は肢節運動失行です。写真のようなキツネの手を真似してもらいます。肢節運動失行がある場合にはこれがうまくできません。
キツネやチョキの手をするなどの他にも、ボタンをはめる、ものをつまむなども大雑把でぎこちなくなります。
道具使用の失行
道具の使用についての失行は歴史的に色々な分類がされてきました。観念運動失行や観念失行、使用失行や概念失行などということがあります。
1920年に失行を提唱したリープマンは観念失行について、マッチとローソクを使ってローソクに火をつけさせるマネをする、など、複数の道具を使った系列的操作の障害として定義をしています。
観念失行という言葉は教科書に出てきますが、歴史的に変遷をしており、道具使用の失行では、使用失行や概念失行と言われることが多いです。初学者はそこまで深堀りしなくてもいいですが、このように別の言葉で表現をされることがあることは知っておいて損はありません。
着衣失行
服が着られなくなったり、間違った着方をしてしまう失行です。服をどのように着たらいいかわからず当惑してしまいます。またポケットに手を通そうとしたり、裏表や前後が反対に着たりします。
いろいろな言葉がでてきて難しい分野です。
しっかり整理をしていきましょう。