- 臨床神経学用語の即時記憶と、心理学用語の短期記憶
- 臨床神経学の近時記憶や遠隔記憶と、心理学の長期記憶の関係は?
- しっかり整理するとわかりやすくなります
初学者にとって、高次脳機能障害はとてもとっつきにくいものです。色々な専門用語が飛び交い、概念的内容がとても多いです。
また研究者によってもかなり言うことが若干異なっている、というのが実際のところです。高次脳機能障害について、初学者のためにシリーズ化をしていきたいと思います。
高次脳機能を学んでいると、記憶と一言でいっても色々な分類がありとても混乱します。まず、記憶の分類としては、時間によるものと、内容によるものがあります。
内容によるものについてはこちらを参考にしてください↓
臨床神経学用語の即時記憶と、心理学用語の短期記憶
混乱の原因1つ目は、即時記憶と短期記憶です。
どちらも刺激や出来事を覚えて、早期すぐに再生するものです。
漢字からすぐにイメージはできると思いますが、これら2つの違いはなんでしょうか。
即時記憶は干渉の入らない短時間の記憶
臨床神経学では即時記憶といいます。即座に再生した記憶です。即時記憶では干渉が入りません。干渉というのは、記憶をしたあとに何らかの邪魔が入ることです。
干渉が入らないのは、例えば、さくら、ねこ、電車とおぼえてもらって、すぐにそれを言ってもらったりすることです。
一方で干渉が入るのは、上の3つの単語を覚えたあとに、100−7を繰り返し計算してもらったり、他の課題を行ったりします。他の課題をしているときは覚えてもらった言葉から離れて、別のことを考えます。
記憶して再生するまでの間に、別のことを考えたり行ったりすることを干渉といいます。
即時記憶というのは干渉が入らない短時間の記憶ということになります。
短期記憶は干渉が入っても入らなくてもいい短時間の記憶
心理学では短期記憶と言います。短期記憶は約1分以内くらいの記憶のことをいいます。心理学の短期記憶では干渉が入ってもいい、ということになっています。
短期記憶は、干渉が入らなくても入ってもいい短時間の記憶です。
つまり、その業界によって、記憶という同じものを別々に分類してきた結果です。即時記憶と短期記憶は概念的にほぼ同じですが、このように若干ニュアンスが異なっていたりもします。
心理学と臨床神経学で用語が違うんだね
近時記憶、遠隔記憶と長期記憶の関係を理解しよう
近時記憶、遠隔記憶と長期記憶の関係です。
臨床神経学では近時記憶と遠隔記憶、心理学用語では長期記憶です。
近時記憶は干渉が入った数分から数日程度の記憶
近時記憶では再生までに干渉が入った数分から数日程度の記憶を指します。
数分から数日程度というと結構な時間があいているように思いますよね。この時間の幅には厳密な定義はありません。
即時記憶は干渉の入らない記憶、近時記憶は干渉が入った記憶というものです。短時間で一旦別のことを考えたりしても、また思い出す力です。
近時記憶は心理学でいうと短期記憶?長期記憶?
少しおさらいをすると、即時記憶は即時なので、せいぜい10秒程度くらいまでの干渉が入らない記憶、
短期記憶は1分以内程度までの記憶のことをいいました。
臨床神経学では即時の次に近時記憶が分類されます。
近時記憶は干渉が入った記憶のことをいいます。
それを時間軸で考えたときに、臨床神経学の近時記憶(干渉の入った記憶)の短時間の部分が、心理学用語の短期記憶と重なります。
つまり近時記憶の一部は短期記憶であり、それ以外の近時記憶は長期記憶となります。
遠隔記憶は人生の思い出
臨床神経学での遠隔記憶は数日程度〜何十年もの記憶についていいますが、これについても厳密な時間的な定義はありません。もちろん、遠隔記憶は心理学での長期記憶に入ります。
遠隔記憶は人生の思い出の記憶です。人生にはさまざまな出来事が起こります。
例えば、昔旅行に行ったこと、学校の入学式、旧友と遊んだことなど、人生で起きたことの記憶です。
遠隔記憶は人生のイベントについて確認をします。卒業した学校を聞くことも遠隔記憶の確認になります。
ちゃんと整理するとわかりやすいでしょ?
- 臨床神経学の分類 – 即時記憶 → 近時記憶 → 遠隔記憶
- 心理学の分類 – 短期記憶 → 長期記憶
- 即時記憶は干渉を挟まない、近時記憶は干渉を挟んだ記憶の再生
- 遠隔記憶は人生の思い出
- 分類の違いは出どころの違いということを意識しましょう
参考文献です。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/30/1/30_1_19/_pdf