脳機能の探求

【高次脳機能学】失語症とは – 様々な種類の失語症がわかる

失語症は、脳損傷によって起きる言語の機能の障害または喪失のことをいいます。

失語症も色々あってよくわからないよ

目次
  • 失語の分類 – まずは話し言葉が流暢かどうかを判断
  • 分類に重要なのは発語、理解、復唱
  • 超皮質性失語と伝導失語 – 復唱ができるかが重要

失語症にも色々と種類があり、以下のようなことで分類をされています。

  • 順序立てて流暢に話すことができるのか
  • ものの名前が言えるのか
  • 復唱ができるのか
  • 他の人の話を理解できるのか

失語の分類 – 最初の評価は話し言葉が流暢かどうか

失語の評価としてまずは患者さんと話してみます。
どうされましたか?体調はどうですか?どのようなことにお困りですか?
オープンクエスチョンで話してくれそうなことをききます。

そのときに発せられた言葉が流暢に出てきているのか、を観察します。
話し言葉がたどたどしい、言葉につまる、全然言葉が発せられない、などがあれば、非流暢性失語の可能性がある、と判断します。

そのときに話し言葉がスムーズに出てくるようであれば言語に問題がないか、流暢性失語の可能性があがります。この段階で意味不明な発語だったりすればより流暢性失語らしいと判断ができます。

分類はまずここからスタートするのがわかりやすいです。

分類に重要なのは発語、理解、復唱

失語症を分類するにはまず、発語、理解、復唱ができるかどうかをチェックします。上の段落でオープンクエスチョンに対する答えで発語を確認しました。すでに流暢性失語なのか非流暢性失語なのか確認をしています。

ここからさらに分類をすすめていきましょう。

ブローカ失語 – 言語の発語の障害

非流暢性失語であることがわかったら、まず頭に思い浮かぶのがブローカ失語です。ブローカ失語は話したくても話せない、でも他の人の話は理解できる失語症です。ブローカ失語は脳のブローカ野と呼ばれる、脳の下前頭回という領域の障害です。

検査する人の指示内容がある程度理解出来ていればブローカ失語だろう、と考えます。ブローカ失語であれば、たいてい言いたいことを言えないもどかしさを表現します。

ブローカ失語は復唱も障害されています。ただし、復唱の評価はまたあとでまとめて説明をします。

全失語 – 言語の理解も発語も障害


発語もたどたどしく、またこちらの言うことが理解もできなければ全失語ということになります。全失語は理解も発語も障害された状態です。

全失語も復唱は障害されています

ウェルニッケ失語 – 言語の理解が障害

次に流暢性失語の場合です。

流暢性失語の代表的なものはウェルニッケ失語になります。ウェルニッケ失語は言語の理解ができない症状が主体です。ウェルニッケ野と呼ばれる、上側頭回の障害で起こります。

ウェルニッケ失語の場合は質問に対して理解ができていません。また流暢とは言ってもその内容は空疎で、錯語という言葉のいい間違えが多くあります。

ウェルニッケ失語も復唱は障害されています

もう一つ、流暢性失語としては健忘失語があります。

健忘失語は比較的理解も保たれています。流暢な発語があり、理解も保たれているならなぜ失語なのでしょうか。

健忘失語とは必要な単語が出てこない、という症状になります。その発語内容が、いうべき単語が出てこず、あれそれが多い、遠回しな言い方をするなどの特徴があります。

ただし、健忘失語は復唱が保たれています。

超皮質性失語と伝導失語 – 復唱の評価をする

ここからが混乱の分類になってきます。しかし、ここまで来たらあとはそれほど難しくはありません。あとは復唱を評価しましょう。

復唱がある程度できたら超皮質性失語

これまで、全失語、ブローカ失語、ウェルニッケ失語、健忘失語を説明してきました。しかし復唱を評価するまではあくまで【分類に当たりをつける】ことをやってきたのです。

ここで復唱を評価してみましょう。単語レベルから、今日は晴れです、といった文で試してみます。

全失語、ブローカ失語、ウェルニッケ失語は復唱ができません。しかし、ここで思ったより復唱はできるぞ、と思ったら、分類が変わってきます。復唱ができたら超皮質性失語という分類になってきます。その分類は次のポイントボックスに記載をします。

  • 全失語と考えたのに復唱ができたら混合型超皮質性失語
  • ブローカ失語と考えたのに復唱ができたら超皮質性運動失語
  • ウェルニッケ失語と考えたのに復唱ができたら超皮質性感覚失語

伝導失語は復唱ができない

健忘失語は復唱ができます。

流暢な話し方で理解も保たれているのに、音韻性錯誤(みかんをみたんという、など)があり、復唱ができなければ伝導失語といいます。

つまり、伝導失語は発語も言語理解もそれなりにしっかりできているのに、復唱になるとできない症状のことをいいます。

一度整理して理解したら、分類できるようになります。頑張ってみてください。

整理できたら大丈夫だよ!

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